竹中土木
すべての技術は、 よりよい作品のために。
Chapter 01

数百年に一度の大変革

少子高齢化が進む日本。労働集約型産業である土木建設業において、作業員の人手不足、高齢化は深刻な問題だ。国もこの現実を重く受け止め、ICTの導入によって建設生産システム全体の生産性向上を目指すi-Constructionの導入を急いでいる。「何百年という長きにわたって同じやり方を続けてきたのがこの業界。そこに今、大変革が起きている」と語る大村啓介。竹中土木のICT推進を担う中心的な技術者だ。「かつて若手は、“ベテランの背中を見て技術を盗め”と教えられた。もはやそのやり方は通用しない。優れた技術者がもつ暗黙知や経験を可視化・データ化して、継承していかなくてはならない。その上で新しい仕事のやり方を確立していくことが、我々のミッションだ」(大村)。

Chapter 02

3次元データの活用

大村がリーダーを務めるICT推進グループが力を入れているのが、3次元データの活用である。例えば複雑な施工条件の現場においては3次元データを使って詳細な施工シミュレーションを実施。施工の効率化・品質向上に結びつけている。またドローンやレーザースキャナーを使った3次元測量技術も確立。人が立ち入りにくい現場でも、短時間で安全・正確に採寸できるようにした。ロボットの活用にも積極的で、現場における省力化のために調査や運搬作業等の自律制御ロボットも開発に取り組んでいる。将来はAIとの連携によって自律制御による無人化も目指して、現場への導入を進めている。

Chapter 03

現場への確実な導入

ICT推進グループでは自社開発技術だけでなく様々な最新技術を導入して現場の改革を進めている。その際に、重要なのが技術を使う側である「現場の視点」だ。大村自身、新技術の導入に際しては自ら作業所に足を運び、説明を繰り返しながら、少しずつ“お試し”で使ってもらうスタイルを取っている。「測量にしても、今までは木の杭を頼りに行ってきたから、目印も使わずに測量した3次元データを使おうと言っても、作業員たちはなかなか信用してくれない。私自身、入社以来ずっと現場で施工管理を務めていたから、その感覚はよくわかる。だからこそ時間をかけ、粘り強く取り組みたい」。新しい技術が次第に現場に受け入れられ、意図したとおりに効率化・品質向上に貢献できたとき、作業員たちは驚きと共に喜びを表現する。その様子を目にすることは、大村にとって大きなやりがいだ。そしてICTを駆使することで自分自身も作品づくりに参画している実感を味わうのである。「今後も新しい生産システムの構築を通じ、ベテランのノウハウや感覚を若い世代へ継承することに貢献したい」。

Profile

大村 啓介
技術・生産本部 技術開発部
ICT推進グループ 課長

1999年入社
生産工学研究科土木工学専攻修了

社会基盤、インフラを手掛けたいと思い、竹中工務店グループでありながら土木専業という事業形態に共感して入社。
地下鉄作業所、ショッピングモール造成、下水処理場施設建築作業地造成、大阪府梅田地下接続作業所など様々な現場を経験し、2007年技術研究所研修生、2009年技術研究所研究員を経て、2014年技術・生産本部技術部。2016年技術・生産本部技術開発部ロボティクスグループ。2020年より現職。
「草の根的な取り組みで、じっくりと現場への新技術導入を進めています。一つの現場でうまくいった技術を、所長が次の現場でも使ってくれると、嬉しく思います」