早期開通の社会的使命
「なんとかできるんちゃうか?」。難しい表情を突き合わせていた男たちの中から、誰ともなくそんな声が上がった。輪の中心にいたのは深津真彦。誰もが無理だと思っていた難工事に真正面から対峙する、そんな覚悟を決めた瞬間だった。1966年の開通以来、交通量が激増する一方の東名高速道路・名神高速道路に対して、新東名高速・伊勢湾岸道とともに機能補完の役割を期待されて建設されることになったのが新名神高速道路だった。2017年の全線開通を目指して工事は急ピッチで進行。その中で兵庫県神戸市の有野川橋西の下部工事を担うことになったのが竹中土木だった。総延長約230m、橋脚21基、橋台3基を用地問題を抱える条件のもと、工期12ヵ月で構築する工事で、通常ならば1年半から2年はかかるだろうという、極めて厳しい条件での受注だった。深津たちは、不可能を可能にするために連日ブレーンストーミングを実施。工期を短縮するためのアイデアがいくつも机上に広げられ、その中の橋脚のプレキャスト化というアイデアに対して「できるんちゃうか?」という判断が下されたのである。しかもすべての橋脚・橋台を完成してから上部工側に引き渡すのではなく、構造物が完成するたびに順次渡していくという異例の手段を採ることに。「下部工、上部工の違いを超えて、全面開通の目標に向けて志を一つにしようとの思いがあった」と深津は振り返る。